執着の正体――手放すことで近づくもの
「執着を手放さなければ」と思っていらっしゃる方は、多いのではないでしょうか。
けれども、一つ確認させていただきたいのです。その「執着」の正体を、きちんとご存じでしょうか。ものが欲しい、あの方が欲しい――それが執着だとお考えなら、少し的が外れているかもしれません。
執着の本体とは、欲しいという気持ちそのものではなく、「その気持ちをどうしても手放したくない」という、さらに奥にある頑なさなのです。
何かが失われそうになったとき、「そうであってほしくない、認めたくない、認めてしまえば本当に失われてしまう」という思いが湧くでしょう。あれです。執着しているのは、もの本体ではなく、その気持ちそのもの。気持ちに、しがみついているのです。
「失いたくない」と強く思うほど、遠ざかる理由
潜在意識についてよく語られることですが、「失いたくない、失いたくない」と強く念じるとき、その言葉は無意識の中で「失いたい」として受け取られる、とお聞きになったことはございませんか。
眉唾に聞こえるかもしれませんが、実感として腑に落ちていらっしゃる方は多いように思います。
何年も試験に合格せず「絶対に諦めない」と言いながら受け続けている方、「あの方しかいない」と言いながらいっこうに進展しない恋愛をしている方――これは、「諦めない気持ちを持ち続けること」自体は、確かに達成されているのです。諦めていないのですから。けれども、本来望んでいた合格も、恋人も、手元には訪れません。
そこが、潜在意識の興味深いところでしょう。
「気持ちを手放す」ということは、「諦める」こととは違います。そのものや人を諦めるのとは、まったくの別問題なのです。気持ちを手放すと、かえって望むものが入ってくることがある、とよく言われるのは、そうした仕組みによるものです。
手放したあとに、何が変わるか
「それが欲しい」「失いたくない」という気持ちを手放していくと、どうなるでしょうか。
苛立ちが減り、心に余裕が生まれます。他のことにも集中できるようになる。焦って的外れなことをしなくなる。視野が広がり、もっと効率の良いやり方が自然と見えてくる。そしてついには、思っていたよりも良い形で、望むものと出会える。そうした流れが生まれてくるのです。
さまざまなお話を伺っていて感じることですが、「なんとかしなければ」と焦れば焦るほど、その焦りが状況をこじらせているケースは、本当に多いものです。なんとかしなくてよい、ということではなく、「なんとかしなければという気持ちを、いったん脇に置いてみる」だけで、見える景色が変わってくるのです。
つまるところ、これは思考が明晰になる、ということでもあります。自らの感情に巻き込まれなくなると、判断力が本来の姿を取り戻す。そのほうが、よほど効率よく物事が動き出すものです。
では、どうすればよいのか
難しく考える必要はございません。
「それを失いたくない」という気持ちを、いちど手放してみる。その気持ちは、もう手放してあげてよいのです。気持ちを手放すことは、そのものを失うこととは違いますから、どうぞご安心ください。
近年では、感情そのものを手放すためのさまざまな方法が広まってきています。瞑想、EFT、セドナメソッドなど、ご自分にしっくりくるものをお探しになるとよいでしょう。
最後に、一つだけ確認させてください。
あなたが本当に望んでいらっしゃるのは、「欲しいという気持ちを持ち続けること」でしょうか。それとも、本当に、そのものが手元にある現実でしょうか。
そこを取り違えないでいただきたい、と思うのです。気持ちを手放したほうが、望むものに近づく。このことがわかると、執着というものの見え方が、少し変わってくるはずです。