「受け入れる」ことから流れは動き出す
よく耳にするお話です。
「変わりたいのに、変われない」「早く今の状態を抜け出したい」「こんな状況がいつまで続くのだろう」――
お気持ちはよくわかります。けれども、こうした状態にある方には、ほぼ共通していることがあります。
今を、受け入れていないのです。
「受け入れる」と「諦める」は、まったく別の話
まずここを整理しておきたいのですが、「今を受け入れること」と「改善を諦めること」は、まったく別物です。けれども、多くの方がこれを混同してしまいます。受け入れたら負けだ、というような感覚をお持ちなのでしょう。
けれども、そうではありません。
今を受け入れないまま、とにかく「うまくいかせよう」「早く変えよう」としている方は、次のような状態に陥りがちです。
- いつもイライラしている
- 「今の状態があってよいはずがない」という思いが頭から離れない
- 焦るあまり、正しくない方法にまで手を出してしまう
- 時間のかかる過程をたどれず、うまくいかないたびにゼロからやり直してしまう
反対に、「この状態があってよい」と腹をくくったうえで動いている方は、
- 問題がすぐに解消しなくても、それが正しい過程であるとわかっている
- だからこそ心が穏やかで、焦りにくい
- 人生から逃げていないため、本当に必要なことだけに集中できる
- 長い目で見て、確実に良い流れをつくっていける
同じ「変わりたい」という気持ちであっても、ここに大きな差が生まれるのです。
苦しめているのは、状況ではなく「考え方」
具体的にお話ししましょう。
ある方が、病気になったとします。
今の状態を受け入れ、「この状態があってよい」と知ったうえで改善を図る方は、病気と向き合いながらも、ご自身の人生を豊かに過ごしていくことができます。痛みがあっても、楽なときにできることをする。痛いときは痛いなりに、嫌だ嫌だと抵抗しないほうが、不思議とそれが早く過ぎていくことも、どこかで感じ取っているものです。
けれども、「こんな状態があってよいはずがない、早くなんとかしなければ」と抵抗し続ける方は、病気のことばかり考えて、ただただ気持ちが沈んでいってしまいます。
ここで覚えておいていただきたいのですが、病気そのものがその方を憂鬱にしているのではありません。「この状態があってよいはずがない。早く取り除いてほしい。取り除けるまでは自分の人生ではない」――その考え方こそが、苦しみを生み出しているのです。
これは、仕事でも人間関係でも、まったく同じ構造です。「あの人さえいなければうまくいくのに」「お金さえあれば」「この状況さえ変われば」――条件付きの未来ばかりを見ている方ほど、今の暮らしが豊かでないように思われます。条件が揃うまで、ご自身の人生を保留にしてしまっているかのようです。
抵抗を手放したとき、流れは動き出す
「受け入れるとは、どうすればよいのでしょうか」
そのようなご質問を、よくいただきます。けれども、「どうすれば」と考えている時点で、また少し力が入りすぎているのかもしれません。
受け入れるということは、技術ではありません。「今ここにあること」を、ただそのまま認める、それだけのことです。嫌であっても構いません。早く変わってほしいと願っても構いません。ただ、「あってよいはずがない」という抵抗だけを、そっと手放してみてください。
その腹のくくり方一つで、流れは大きく変わっていくものです。
人生というものは、「うまくいっていないことをなんとかしなければ」という力で動くのではなく、「今ここ」を丁寧に生きる方のもとへ、次の流れが訪れるようにできています。抵抗を手放した瞬間から、思いがけず物事が動き始める――そうしたことは、実によくあるのです。
うまくいかせようとする、その思いそのものが――ご自身の人生の流れを、妨げているのかもしれません。